CIEMとは?機能やメリット、CSPMとの違いをわかりやすく解説
CIEMとは、パブリッククラウドにおける過剰権限を監視・修正するためのソリューションです。CIEMの導入により、複雑な権限を可視化し、セキュリティリスクを素早く特定・修正できるようになります。
昨今ではクラウドサービスの利用が増加しており、企業の機密情報が集約されたクラウドは、サイバー攻撃の対象となっています。そのような中で、CIEMソリューションはセキュリティ対策の有効な手段となり得ます。
本記事では、CIEMの概要や必要とされる理由、主な機能についてまとめました。比較されやすいCSPMとの違いや、導入のメリット、ソリューション選びのポイントについても解説します。CIEMについて基本から知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
CIEMとは
CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management:キーム)は、クラウドサービスを安全に利用するためのセキュリティソリューションの一つです。
SIEM(Security Information and Event Management:シーム)と区別するために「キーム」と呼ばれています。CIEMにより、クラウド環境の権限を管理することで、権限侵害による被害を防げます。
情報セキュリティの概念の一つに「ユーザーが職務を遂行するのに必要な最小限のアクセス・権限のみをユーザーに与えるべき」という考え方があります。これを最小権限といいます。
しかし、パブリッククラウドの権限は種類が多く複雑なため、管理が煩雑になりやすいのが課題です。CIEMを導入すれば、クラウド上の権限を可視化し、過剰な権限を修正・最小化できるようになります。
CIEMはなぜ今必要とされているのか?
では、CIEMはなぜ今必要とされているのでしょうか。
パブリッククラウドの利用拡大に伴い、権限も複雑化している企業が多いでしょう。ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境を運用しているなら、複雑さはより増します。
最小権限を実現できなければ、過剰権限によるセキュリティリスクや、意図しないセキュリティリスクが発生してしまいます。このような問題を防ぐためにも、CIEMの導入は重要なのです。
以下で詳しく解説していきます。
過剰権限によるセキュリティリスクを防ぐため
クラウド環境では、従業員が担当業務以外の領域の不必要な権限まで意図せず付与されていることがあります。これにより、誤作動によるインシデントや、内部からの不正アクセスのリスクが増大します。
こういった過剰権限によるセキュリティリスクがあるため、CIEMの導入によって防ぐことが重要視されています。
意図しないセキュリティリスクを防ぐため
内部での誤作動や不正だけでなく、権限を悪用した外部攻撃者からのセキュリティ対策も重要です。不審なアクセスが放置されれば、権限昇格等によりさらなる侵入拡大が生じる可能性があります。
CIEMは不審なアクティビティがあれば検知し、適切なアクセス制御や監査を実施します。意図しないセキュリティリスクや、その後の被害拡大を防ぐためにもCIEMは欠かせない存在だと考えられます。
CIEMの主な機能
CIEMの主な機能を解説します。具体的な機能として以下の4つが挙げられます。
- 権限の可視化・リスク分析
- 推奨ポリシーの提示
- 継続的な権限設定の監視
- コンプライアンス評価
一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 権限の可視化・リスク分析
CIEMの基盤となる機能が、権限の可視化とリスク分析です。パブリッククラウドにおけるユーザーやアカウントの権限を可視化し、それに対するセキュリティリスクを分析します。
不適切なアクセス権限や異常なアクセスパターンを早期に検知することは、権限を適切に最小化するための重要なステップです。
2. 推奨ポリシーの提示
推奨ポリシーの提示も、CIEMの重要な機能の一つです。解析によりリスクが高いとされたユーザーに対して、本来あるべき最小限の権限設定を提示します。
これにより、セキュリティポリシーに沿った運用をできるようになり、セキュアな環境を構築できます。
3. 継続的な権限設定の監視
セキュアな環境を構築したなら、その安全性を保ち続けることが肝要です。CIEMにより、継続的な権限設定を監視できるようになります。
権限を最適化したあとも、権限設定の監視は継続されます。不適切な変更や過剰権限を検知すれば、最適な設定に修正します。
CIEMがリアルタイムにセキュリティリスクを排除するため、セキュアな環境を維持することが可能です。
4. コンプライアンス評価
CIEMは、コンプライアンス評価の役割も果たします。業界基準のコンプライアンスに基づき、ユーザーやアクセスごとの権限が適切かどうかを評価します。違反点があれば詳細を特定し、必要に応じて修正を促します。
これにより、企業はコンプライアンス違反を未然に防ぎ、重要なデータやシステムを守れるようになります。
CIEMのメリット
CIEMによるセキュリティ対策のメリットをご紹介します。
- マルチクラウドのIDおよび権限の一元管理ができる
- 自動修正によりセキュリティ対策を効率化できる
- コンプライアンス要件を確保できる
それぞれを詳しく解説していきます。
1. マルチクラウドのIDおよび権限の一元管理ができる
CIEMの導入によるもっとも大きなメリットは、クラウドの ID と権限の管理ができることです。マルチクラウド環境では権限管理をするのが複雑で難しくなりがちです。しかし、CIEMでは、単一のダッシュボードを用いて複数のパブリッククラウドが、簡単に可視化できるようになります。かつアクセス許可の管理と監視をシームレスにおこないます。
2. 自動修正によりセキュリティ対策を効率化できる
自動修正により、セキュリティ対策を効率化できることもメリットです。CIEMツールの自動修正では、過剰な権限を削除したり、長期的に使用されていないアカウントを特定して無効化したりします。また、セキュリティポリシーに違反するエンタイトルメント設定も修正します。
これにより検出されたエンタイトルメントのセキュリティリスクに素早く対応することが可能です。
企業で起こるクラウドの設定ミスによるリスクの代表格が情報漏洩です。情報漏洩の多くは人為的なミスから起こるといわれています。自動修正により、手動の設定変更などヒューマンエラーから発生する重大なインシデントを防ぎます。
さらに、手動で作業をする手間を省けるため、開発担当者やセキュリティチームがコア業務や優先度の高いタスクに集中できるようになります。
企業によっては、担当者がセキュリティ対策に追われて本来の業務に集中できないといった課題を抱えていることもあります。
CIEMソリューションの自動修正機能により、権限管理プロセスを自動化することで人的ミスを減少させ、運用効率を向上させます。担当者も本来注力すべきコア業務に集中できるようになるでしょう。
3. コンプライアンス要件を確保できる
コンプライアンス要件を確保できることもメリットの一つです。
CIEMは、厳密なアクセスポリシーの適用と監査を可能にし、組織が規制や業界基準に適切に準拠しているかを明確化します。ひいては、コンプライアンスを徹底していることの証明にもなります、
これにより、企業は信頼性の高いセキュリティ環境を構築し、法的リスクを最小限に抑えることができます。
CIEMとCSPMの違い
CIEMと比較されやすいソリューションの一つに、「CSPM(Cloud Security Posture Management:クラウドセキュリティ態勢管理)」があります。ここでは、CIEMとCSPMの違いについて解説します。
CIEMソリューションは「過剰権限」に対応している一方、CSPMソリューションは「設定ミス」に対応している点に違いがあります。
詳しく見ていきましょう。
CIEMソリューションは「過剰権限」に対応
先に触れた通り、CIEMソリューションはパブリッククラウドでの「過剰権限」に対応しています。具体的には、以下のような機能です。
- クラウド環境の各ユーザーのアクセス権限状況とリスクを可視化
- 最小権限に基づいた権限管理体制を構築・適用
- 各コンプライアンスに基づき、ユーザーやアクセスごとの権限の適否を評価
CSPMソリューションは「設定ミス」に対応
一方、CSPMソリューションは、パブリッククラウドでの「設定ミス」に対応しています。具体的には、以下のような機能です。
- クラウド環境の設定状況とリスクを可視化
- 設定ミスやインシデントを検知
- 国際基準に基づき、ポリシー違反をチェック
CIEMとCSPMは、いずれもパブリッククラウドでのセキュリティを強化するためのものです。しかし上記のように、それぞれ管理対象が異なります。
関連記事:/blog/about-cspmCSPMとは?CWPPやSSPM、CASBとの違いや機能、ツールの選び方を解説
クラウド環境を守るにはCIEMとCSPMの両者が必要
「CIEMとCSPMのどちらを導入すればよいの?」と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。結論、適切なクラウド環境を守るにはCIEMとCSPMの両者が必要です。
クラウドプロバイダーのメインとなるAzure、AWS、Google Cloudだけでも、数百種類以上ものサービスを展開しています。それぞれの設定オプションやアクセス権限を把握しようとすると、手動でおこなうことは難しいでしょう。
CIEMとCSPMを組み合わせることで、パブリッククラウド上のセキュリティリスクをより軽減できるようになります。
CIEMソリューションを選定するポイント
CIEMソリューションを選定するポイントを解説します。
- 対応するクラウドプラットフォームは何か
- アクセスパスでの可視化ができるか
- 異常な権限設定を自動修正する機能があるか
- 同一製品で他のクラウドセキュリティ機能をカバーしているか
CIEMの重要性を理解していても、どのようにソリューションを選ぶべきかわからない方もいるでしょう。それぞれのポイントを詳しく説明するので、自社に適切なCIEMソリューションを選ぶためにお役立てください。
1. 対応するクラウドプラットフォームは何か
まずは、対応しているパブリッククラウドプラットフォームを確認しましょう。AWS、Azure、GCPなどメジャーなプロバイダであれば対応している可能性は大いにあります。しかし、ソリューションごとに対応内容は異なるため注意しましょう。
昨今では複数のクラウドプロバイダーを利用している企業が多いため、使用しているプロバイダを適切に把握することが大切です。その上で、自社に適したCIEMソリューションを選ぶようにしましょう。
2. アクセスパスでの可視化ができるか
ソリューションによっては、データベースからデータを取り出すアクセスパスに割り当てられた各権限を可視化できるものもあります。この機能により、ユーザーがどのアクセス経路を通じてデータにアクセスしているのか、明確に可視化できるようになります。
アカウントやリソースの関連性をよりわかりやすくしたい場合は、アクセスパスでの可視化に対応しているものを選ぶようにしましょう。
3. 異常な権限設定を自動修正する機能があるか
設定を自動修正する機能があるかどうかもポイントです。不適切な権限をはじめ異常を検知したらすぐに自動修正し、セキュリティリスクを瞬時に取り除いてくれるものを選びましょう。
CIEMを導入する大きなメリットは、クラウド環境のセキュリティリスクの軽減と、セキュリティ対策の業務効率化です。自動修正機能が備わっていれば、セキュリティの一貫性と効率性を確保できるようになります。
ただし一方で、自動修正により他のシステムへ影響が出たり、担当者が必要な作業をできなくなったりするリスクもあります。その場合には、手動での権限設定と使い分けましょう。
4. 同一製品で他のクラウドセキュリティ機能をカバーしているか
同一製品で、他のクラウドセキュリティ機能をカバーしているかどうかも考慮しましょう。CIEMソリューションのなかには、他のクラウドセキュリティ機能(例:CASBやCSPM、CWPPなど)もカバーしているものもあります。
このようなソリューションを選べば、クラウドセキュリティリスクへの対策を一括管理できます。煩雑な管理の手間が少なくなり、より業務を効率化できるでしょう。
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クラウドサービスの利用が増加し、サイバー攻撃の対象とされる昨今。クラウドサービスのセキュリティ強化は欠かせません。
しかし、種類が多く複雑なパブリッククラウドの権限を適切に管理するには、手作業での対応には限界があります。こういった背景から、ソリューションによるセキュリティ強化・自動化は有効な手段の一つです。
クラウドサービスのセキュリティ対策に必要となるソリューションは、本記事でご紹介したCIEMだけではありません。他にも脆弱性管理やSBOM、CSPMなど、さまざまな対策が必要です。
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